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検診の間隔

高頻度に胃癌が発症する地域における内視鏡検査の間隔と診断時の胃癌ステージとの関係

Nam JH, et al. Cancer,2012 ; 118(20) : 4953-4960

 世界で胃癌の発症頻度が最も高いのは、韓国、日本、中国など東アジア地域である。胃癌の予後は診断時のステージに大きく関係しており、早期発見と早期治療こそが胃癌の死亡率を低下させる方法である。早期発見により低侵襲の治癒的治療が受けられ、治療後のQOLも改善が期待できる。胃癌のスクリーニングには様々な方法があるが、日本の研究ではスクリーニングを受けなかった患者に比べて間接撮影法によるスクリーニングを受けた患者で死亡のリスクが低下していたと報告されている。また最近、著者らは内視鏡検査を2年ごとに行ったところ胃癌発症率の低下と診断時高ステージの患者数減少に至ったことを報告した。内視鏡検査が胃癌関連死亡率を低下させる効果についての複数の知見に一貫性はないが、それは検査の間隔の差によるものと思われる。そこで今回、上部内視鏡検査の実施間隔と胃癌診断時のステージに関係があるかどうかをretrospectiveに調べた。
 解析対象は2004年1月~2009年12月に韓国国立がんセンターで上部内視鏡検査を受け、病理学的に胃腺癌との診断を受けた連続患者である。診断前6ヵ月以内に内視鏡検査を受けた例、同時性多発胃癌例は解析対象から除外した。
 患者は胃癌診断に至った内視鏡検査とそれに先立つ内視鏡検査の実施時期によって以下の7群に分けた。①群1年(7~18ヵ月)、②群2年(19~30ヵ月)、③群3年(31~42ヵ月)、④群4年(43~54ヵ月)、⑤群5年(55~66ヵ月)、⑥群>5年(>66ヵ月)、⑦群内視鏡検査を受けた経験なし。
 胃癌のステージはAJCC 6版に基づき早期(T1)または進行(T2以上)に分類した。腫瘍部位は日本の胃癌取り扱い規約13版に従い、近位と遠位とした。
 評価可能症例は2,485例であった。平均年齢は57.3±11.9歳で、ステージIVの患者(55.4±12.1歳)はステージI(58.0±11.5歳)、II(58.1±11.4歳)に比べて若かった。男女比は2対1で、男女間における診断時のステージに差はみられなかった。また喫煙歴、飲酒状況、教育レベル、Helicobacter pylori感染率(78.8%)に関してステージ間での差はなかった。
 内視鏡検査実施経験者1,216例における実施間隔の中央値は30ヵ月で、間隔の長さと胃癌のステージは有意に関連していた(p<0.001)。年齢、性別で補正後で、ステージが進行するリスクは実施間隔が1ヵ月延びるごとに1.0023倍(95%CI 1.0004-1.0042、p=0.013)、進行胃癌発見率は1.003倍(1.001-1.005、p=0.002)上昇していた。 ステージIの患者の割合は実施間隔が3年以内の①~③群はそれぞれ70%前後であったのに対し、実施経験のない⑦群では45.5%と少なかった。年齢、性別で補正後で、①群から⑦群までの1年ごとの間隔の延長によるステージ進行のリスクは23%(OR=1.23、95%CI 1.19-1.28、p<0.001)であったが、①~⑥群までを⑦群と比較すると、>5年の⑥群でもORは0.53で有意に高ステージ率は低く(p<0.001)、間隔が短くなるごとにORは低下し、①群ではOR=0.31(p<0.001)であった。
 進行胃癌のリスクを①群と比べると、④群(OR=2.53、p=0.001)⑤群(OR=2.16、p=0.004)では有意に上昇していたが、②群(OR=1.11)③群(OR=1.21)では有意な上昇はみられなかった。 次に、患者の背景因子をもとに内視鏡検査実施間隔診断時ステージとの関係をみると、40歳未満の患者(OR=1.08、p=0.192)を除いてすべてのサブグループで間隔が延長すれば高ステージのリスクも上昇している(p<0.001)ことがわかった。
 では3年以内の実施がbenefitをもたらすのはどのサブグループかということを調べたところ(評価可能758例)、胃癌の家族歴をもつグループ(OR=1.62、p=0.014)、60~69歳のグループ(OR=1.45、p=0.041)、および分化型のグループ(OR=1.52、p=0.010)で、内視鏡検査の実施間隔が3年を超えると1年間隔に比べて診断時高ステージのリスクが高くなるという関係がみられた。 家族歴を有する場合、実施間隔3年は1年に比べて高ステージへの進行リスクが有意に高かったが(OR=2.68、p=0.010)、2年では1年との有意差はみられなかった(OR=1.88、p=0.61)。また3年と2年を比較すると3年でリスクが上昇する傾向が認められた(OR=2.05、p=0.059)。 60歳代の患者でも1年と比べて3年のリスクは高く、2年ではリスク上昇はみられなかった。分化型では2年、3年ともリスクが有意に上昇していた。
 以上の解析から、胃癌の内視鏡検査を受けた患者では実施間隔が何年であっても受けない患者に比べると診断時高ステージのリスクは低く、とくに実施間隔が3年以内であれば早期発見につながると考えられた。ただし40歳未満ではこの関係はみられなかったことから、40歳以上の人で胃癌の頻発地域に住み標準リスクを有する場合は早期発見のために少なくとも3年間隔で上部内視鏡検査を受けるべきであろう。またとくに胃癌の家族歴がある、60歳以上であるなどのリスクを有する人は内視鏡実施間隔を3年以内にするのが望ましいと考える。

コメント>>>日本と同様に胃癌頻発地域である韓国における7年間のデータをretrospectiveに解析した報告である。論文では内視鏡検査を受けた患者では実施間隔が何年であっても受けない患者より胃癌診断時に高ステージであるリスクは低く、実施間隔が3年以内であれば早期発見につながる。40歳以上で胃癌頻発地域では早期発見のため3年間隔で上部内視鏡検査を受けるべきで、特に胃癌の家族歴を有する場合や、加えて60歳以上であれば内視鏡実施間隔を3年以内にするのが望ましいと結論づけている。
 本邦においては2008年消化器集団検診学会の胃内視鏡検診標準化研究会の報告で、胃内視鏡検診間隔について記載されている。押本らはEMR治療が可能な胃癌を発見するためには遂年の内視鏡検査と報告しているが、大浦らは早期胃癌を発見するためには隔年の内視鏡検査で良いと報告している。日山らはHelicobacter pylori感染と胃癌発生からみた内視鏡検診間隔は、高危険群である体部優勢胃炎は遂年検診が良いと報告しており、検診間隔については定まっていないのが現状である。いずれにせよ高危険群と低危険群に分けた対象が集約された至適な内視鏡実施間隔が本邦から発信されることに期待したい。


# by kenzaburou41 | 2025-07-10 20:25 | 胃がん撲滅運動 | Comments(0)

頸部食道癌術後の胸部食道癌は早くみつかるか?

うちは都内でも頸部食道癌の手術が異常に多くて

みなさん声を失いたくないので、頸部食道癌に抗がん剤でうんと小さくして
声を残し、かつ胸部食道も残し、おなかから小腸の1部をきりとって咽頭と食道の間に
小腸をはさんでつなぐ「遊離空腸再建」を行っています。

のどものこるし、食道も残る、さらに胃も残る
ってことでなるべくとる範囲を小さくして、患者さんの負担を減らそうって手術。

もちろん秋野さんのように抗がん剤と放射線治療で根治を目指す、かたも多いですが
ケモラジは効果がひとそれぞれで、人によっては効果が一時的で局所再発したら
声を残せない可能性もでてくるというデメリットもあります。

でうまくいったかた

食道残ってる、胃も残ってる、咽頭も残ってる

ここは次の癌の発生母地となるので、一定頻度で
異時性の多発がんがでてきます。

「遊離空腸再建後の食道異時性多発がん」

吻合部が狭いと内視鏡で切除するのはやや難儀で
吻合部を拡張してからESD
もしくは
細径内視鏡でESD どっちか。

手術からいつごろ、どんな、どこに できるか

ESDだけですむのか

まあまあのケースを経験しています。

頸部食道がんの手術はうちの特色ですし
今度調べてみましょう





# by kenzaburou41 | 2025-07-09 15:05 | 内視鏡治療 | Comments(0)

参議院

ケン三郎の検診改革

胃癌検診=バリウム中心を

咽頭・食道・胃・十二指腸検診=内視鏡中心に変える

全国の自治体でまだ内視鏡検診をやってない所に
必ず内視鏡検診をやるようにお触れを出す

80歳以上のがん検診は打ち切る、
代わりに50歳・55歳・60歳の検診を重点的に

病院に「がん」と診断された人には
「上部」「下部」内視鏡を受けていただく

リスクの高い人を抽出して
食道癌、胃癌、大腸癌、咽頭癌の早期発見を加速させる

このたび、
参議院東京選挙区に

ケン三郎のまな弟子が立候補しました。

2週間、全力応援です

うかったら国の医療制度にもものが言えるかもしれません

頑張れ~ゆうだい






















# by kenzaburou41 | 2025-07-07 18:53 | ひとり言 | Comments(0)

42回EGMR研究会

無事に講演おわりました。
3人の演者の1人にえらばれて
「亜全周性~全周食道扁平上皮癌に対するESD戦略」
について語りました。

大阪国際がんセンターの石原先生からは
Esophagasにて報告された食道癌ESDEMR全国調査の結果と
どのくらいとったらどのくらい狭くなるかのより具体的な見通しについて

全国的に9割以上にESDが選択される
ごくごくまれだがESDによる死亡例があり高齢者や間質性肺炎、
透析患者さん、併存疾患のある方には注意が必要

全周ESDは高率に狭窄をきたすので予防策を必ずたてる、
広く切除した場合はステロイドの内服>局注がよさそうであり
症例に応じて使い分ける

cT1a-MM/SM1で全周5cm以上になると、ガイドラインでESDを勧めないのは
切除しても結局6割以上で追加治療が必要になるから。
食道癌だけしかなく若くて元気なかたには手術もしくはケモラジを最初からすすめた方がよい

ESD時に正常粘膜を一条残した方がそこから上皮が再生するので残せるならなるべく
残した方がいい

ケン三郎・
昔から食道早期癌にAPCを使って治療してきた。
ESD瘢痕上にできた局所再発、異時性多発は再ESDが難しい
APCでpulsed APC3.0で膨化させ、上皮下にアルゴンガスを吹き込んで
probeで口側からESDのように押し進めると上皮がきれいに剥ける
その剥けたあとにForced APCで均等にやけば浅く狭いEP癌なら十分対応できる。

広く浅いやつには2000年代にEMRとAPCで治療した。ケナコルトがなかった時代で
狭窄へ十分な対応が難しかった。13人中6人が10回以上の拡張を必要とした。
最大で49回拡張にきてもらった。何度もAPCと拡張を繰り返し、先が見えない時もあった。
拡張で穿孔した人が1人いたが、保存的に治った。
13例に行い11例は局所制御できた。しかしMM癌の方は局所が進行して結局手術を受けた。
1人はAPC後に局所再燃していたが認知症で病院に通えなくなった。
原病死はなく、他癌死が4人 でも5年以上生存が9名、うち5名は10年以上生存が確認できた。
13人中9人、約7割は5年生存した。

2012年からはESDとEMRAPCを組み合わせる計画的分割治療をやってきた。
最初の症例は狭心症でカテーテル治療を受けた方、手術やケモラジを選択しにくいかた
でも最初から全周ESDすると狭窄が心配
だからまず最初に6分の5周ESDで切除してケナコルトを複数回打った。
そうするとそれほど狭窄がこなかった。病理はLPMだった。食道が残せそうと確信した。
一条だけ縦に残して2か月後にEMRとAPCで治療した。この2回の治療だけで狭窄はこず、
7年再発ないことを確認して地域にお返しした。最初の1例がうまくいった。

2012年から2024年まで全周または亜全周の早期食道癌、
計画的分割治療で1年以上経過が追えた方は29人いた。なんらかの併存疾患のかる方が
25人いて、まったく生涯健康なかたはわずか4人だった。
同時期に最初から手術したのは15人、ケモラジをしたのが6人いた。
つまり全体では50人いて、そのうち約6割がESDを初めに選択した。

29人ESD後の病理結果はSM2が6人、脈管侵襲5人(重複あり)が含まれた。
深達度診断はMM/SM1になると精度がおち、精度の低い術前診断を元に方針をたてるより
病理診断を元に方針を再検討するほうが良いと思った。

その結果、22人が内視鏡治療の継続(うち3人は転移リスクあり追加治療を勧めたが拒否)
を希望した。6人は手術を希望し、1人がケモラジを希望した。

ケモラジを選んだ方は亜全周でMMを疑うケース。横にちょっとだけ伸びてたところを
わざと残して5/6周に切除して狭窄対策をしたら狭窄がこなくてすんだ。
sm2で脈管侵襲陽性とわかり、内視鏡治療では治りませんよと伝えた。
癌のこってます。どうしますか? 患者さんはケモラジを希望された。
ESDから2か月で放射線治療+抗がん剤治療に移行でき、7年再発なく経過している

いいケースもあれば頸部食道の全周・第二生理的狭窄部の全周(もともと狭い)ところでの
亜全周ESDは1か月後に高度狭窄をきたし、拡張とAPCを繰り返すことになった。
最大で20回拡張、APC5回治療が必要だった。頸部食道と第二生理的狭窄部の全周切除は
控える・もしくは狭窄に最大限の注意を払う必要がある。

また進行中下咽頭がんと併存したかたは、その後咽頭癌が再発して亡くなったかたも3人いて
食道癌が予後因子にならなかった。食道癌の治療を組み立てるうえで
バランス感覚も大事だとおもった。

ESD後の狭窄あり 10人(34.5%)  全周性病変22例中狭窄あり8人
(36.4%)通常全周切除ではその後6割以上~10割狭窄がくると
される業界で確実に狭窄を減らせた。(RCTではない)

7回以上の拡張は4名のみで治療に難渋することが少なかった。

2回目以降の治療は EMR+APC・APCで治療することが大半で
治療回数0(一条残したけどESDのみでフォロー)2例、1回9例で半数はESDと合わせて2回以下で治療が完遂した。

経過中5人が転移再発した。再発は2年7か月、5年10か月、4年8か月、4年、8年と
ESDからかなり遅れて再発し、遠隔に飛ぶケースが少なくなかった。
うち3人はその後食道癌で亡くなった
2人は転移リスクありから再発したので理解できるが3人は転移リスクないm2m3
脈管陰性の19人から生じた。 
全周性食道癌・5cmを超える>m3でも転移がくるのでESDの適応拡大は慎重に。

という内容でした。
さてみんなに伝わるよう、英語論文にしないとな。





# by kenzaburou41 | 2025-07-06 08:15 | 講演録 | Comments(0)

42回EGMR研究会

明日EGMR研究会で
周在性の広い食道早期癌への計画的分割治療

という内容で発表します。

これはESDを複数回に分ける「stepwize ESD」ではなく

ESDを最深部を含む病変の主要部にまずやって、
病理組織学的所見を診て
内視鏡で済みそうなら、次の残りの遺残部への
内視鏡治療へステップアップする

大ボスが提唱した「ステップアップ戦略」の流れをくむもので

次の治療をESDにこだわらず
ちいさくEMRしたり、APCで焼いたりして段階的にヨード不染を
減らしていく治療法です。

瘢痕の上にのったところをまたESDするのはとっても難儀ですし

扁平上皮がんが瘢痕の中に拡がっていくこともある

ゆえ、残すところは浅く距離も短くどうみても浅いとこに限ります

こうした段階的にESDを行うことで

内視鏡治療では治らないものを速やかに撤退し、次のステップに進める
という利点もあり

手術や、いやならケモラジを選べる

高度狭窄ですぐに後治療に入れないデメリットがないのが利点です。

明日登壇します~皆さんお楽しみに









# by kenzaburou41 | 2025-07-03 22:42 | 講演録 | Comments(0)