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切除不能進行食道癌

切除不能食道癌で肺や肝臓に転移のない
ものはステージⅣa期で、
(T4で転移のないもののみ3期)
この状況で治療開始、となると

治ること

よりも

いかにいい状態で長く暮らせるか?

にポイントを置きます

治らないこともないけれど、最初に診断された
ステージ(進行具合)が進めば進むほど
治る確率は低くなります。

ステージⅢ期と比べてガクッと成績がおち、
いいところで2割、以前は1割いくかどうか
という成績でした。

さて、治療法としては切除不能ですので、基本
手術を最初に選ぶ、という施設は少ないようで

抗がん剤、放射線この2つの治療がメインの
癌をたたく治療となります。

放射線は同じ場所には1度しかあてられません

抗がん剤は効果のあるかぎり、繰り返し行えます。
その代り、癌を治すパワーは放射線よりも弱い、

放射線をやるときには抗がん剤を加えたほうが
効果が高いので通常は抗がん剤と放射線を同時に
行うのが一般的です。

また放射線と抗がん剤では、それに伴う有害事象
もさまざま、「手術をしなくてすむ」といいましても
放射線と抗がん剤も決して低侵襲な治療では
ありません、時に治療関連死(治療が原因で死亡)
する場合もあります。

それと同じくらいの危険を伴う
治療と考えましょう

ステージⅣa=自動的に抗がん剤と放射線
からスタートし、効果があって縮小したら
救済手術を行う、切除できなさそうなら
バイパス手術をおく、という施設もありますが

放射線を当てると、穴が開きそう、
大動脈と交通して出血死しそう

という場合には、治療中に食事がとれないまま
死亡する、という可能性もあるため
まず、食道バイパス手術をさきにおいてから
放射線を当てる、という考え方もあります。

その場合は腹部のリンパ節郭清は同時に行えるので
放射線照射の範囲を局所だけに絞れる、という
メリットもあります。

問題は手術がうまくいかず、合併症を起こすと
正規に行う予定だった放射線、抗がん剤が
後後に遅れてしまい、癌が進行してしまう
というリスクがあります。

食道癌治療は症例数が多い施設ほど成績がいい

これは周知の事実で
最近は新聞、週刊誌でもその症例数が
掲載されています。

1番が1番いい

ようにもみえますが、

年間20例近く食道癌の手術をしている施設ならば
かなり慣れている施設と考えてよいと思います。

40あれば、ほぼ毎週のように食道癌手術がある
わけですので、相当こなしている施設です。

あまり多すぎると、スタッフの負担も相当です、
実際、そういう施設の先生は早朝から働いて
深夜まで術後管理、土日ももちろん顔を出す

困った人を助けたい、と仕事に夢中になっている
先生がほとんどです。

バイパス手術も、経験豊富な施設ほど
おそらく安全にできると思います。

放射線、抗がん剤が効果がなく
切除はできない、でも食事を一口でも食べたい

こうした治療をさんざんやった上の
バイパス手術は栄養状態も悪く、
リスクもそれなりにあります。


でも、ずーっとずーっと食事がとれなくて

バイパス手術をうけて
お水が飲めた患者さんは必ずこういいます

「ああ、水が飲めることがこんなに幸せとは
今まで思わなかった、、」

この一言のために、食道屋さんは日々
やりがいを感じて仕事に打ち込んでいます。
by kenzaburou41 | 2012-07-26 08:17 | 食道癌診断治療ガイドライン | Comments(0)
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