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後出血

食道がんの手術~気をつけること

手術中に起きることで命にかかわることというとまず出血が
第一に挙げられます。

食道がんの手術は、消化器外科の手術でもあり
胸部外科の手術でもあり、首も扱うし、腹もあける

大きな手術です

それだけ守備範囲が広いわけですので
さらに癌が進行しているとなると、出血も多くなりやすく

かつもともと余分な脂肪の多い方は手術もしにくく
出血量も多くなりがちです。


手術中に止血ができなくて、命を落とした、

という経験は僕はありませんが、

自分の手に負えなくなって、上司に止めてもらった
という経験は何度もあります。

「出た時にしっかり止められるか」もまた
外科医の大事なスキルで

問題が起きるのは、あるていど人間がやること
なので仕方がないのですが

起きた時に、最悪の事態=死

を回避するために、被害を最小限で食い止める
努力をしなければなりません


一人として同じケースというのは
ありませんから、常に出た時にどう対応するのが
いいか、を準備しておく必要があります。


無事手術中止血ができて帰ってきた。

しかし出血量が多いほど、術後の循環動態も
変動しやすく、

手術時間が長いほど、体の負担も大きくなります。

手術した当日、患者さんの家族に術中に様子を
説明し、とれたものを見ていただき、

「これくらいの病気でした、残念ながら
かなり転移があったので、再発する可能性が
高いと思います」

などの予測を聞き、

ご家族には面会していただいて帰ってもらうのですが

時々

そうたくさんあってはならないのですが

「後出血(こうしゅっけつ)」といって
手術が終わったときには止まっていた血が

また出始める、ということがあります。


体に患者さんはいろんな管をつけて帰ってきて
そこから血が垂れていると、ご家族の方は
初めて見たときに「血がでてる」とびっくりされます。


管は「たまったものを外にだす」役目と
「出血していないか、中の様子を知る」2つの役割があります。

術当日の役目は主にこの「中の様子をしる」目的です。

管から真っ赤な血がびゅんびゅんでて、タンクいっぱいになって
血圧もさがる、脈が早くなる

このときは輸血を用意しながら、止血のことを考えねばなりません

「再手術したほうがよいだろうか」
「いや、これくらなら待てそうだろう」

ご家族が帰った後も、我々はこまめに管の様子をチェックし、

「ああ、これなら安心だ」ということを確認して床につきます。


採血して、やっぱり出てる、となるとまた手術室に
もどって、麻酔をかけて、と再手術になります。


いざ開けてみると、ほんとに小さな血管からの
拍動性の出血で、「これが原因?、、うーん、、」

再手術は患者さんにとっても、医師にとっても
ダメージが大きいです。

昼も夜も、食道外科医、
がんばってます

ぽちっとな
by kenzaburou41 | 2012-08-13 23:38 | 手術メモ | Comments(0)
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