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放射線治療後のステント

放射線治療後のステント_b0180148_22442426.jpg
切除不能進行食道癌の患者さん

切除不能というくらいなので、かなり
食道が狭く、全くものが食べられない
という方も少なくありません

こんなことならもっと早く病院を
受診すればよかったという方が
多く、また

家族の方も「早く病院に行った方が
いいのに」と促したにも関わらず
「病院に行くのが怖くて」
といって治療が遅れる患者さんも
いらっしゃいます

さてどうにかそれでも食事がしたい
ということで、治療を開始しますが

放射線療法の前にステントという食道を
拡げる筒を入れた方、もしくは食べられないから
早くなんとかしてほしいというご希望で
放射線の治療中にステントを入れた方、

こういう方では食道に穴があいたり、
命にかかわるような出血がおきやすい
ことが知られています。

放射線が効いた症例では時間がたって
狭窄が解除される可能性があること、
ひいては予後が良くなる可能性があること

ということで、「食べられないから
早くステントを入れる」のは避けた方が
いいとされています。

しかしながら、放射線をやっても奏功せず、図のように
高度狭窄が残ってしまった場合

あとからステントで拡げる、というときも要注意で
出血,孔が開く、食道の周りに炎症がひろがる
といった致死的な合併症がおきやすいので
「どーしても食べたい」という場合は
「入れた事で逆に死期を早めるかもしれないですよ」
ということを話しておく必要があります。

ケン三郎の経験では12人の放射線照射後の
ステントで6人(50%)に致命的な合併症が
起きて患者さんをなくしています。

もともと食道癌自体も進行していたので
ステントだけが悪い,というわけではありませんが

写真の患者さんは、試しに内視鏡ゆっくり風船
で拡げてみたら、食道に小穴があいて
熱がでたので、ステントを入れるのを止めて
バイパス手術を行いました。

バイパス手術のいい所は、余命あと3ヶ月
だとしても、もしかしたら
「食べられて,家で過ごせるかもしれない」
という生活の質を最後まで維持するために
外科医ができる、最大源の治療でもあります。

もちろん、全く合併症がないわけではありませんし
癌治療に疲れてヘトヘトになって
もう、治療はいいです、そっとしてほしい、、、
気持ちの上で食べる事に前向きになっていない
方には難しい治療です。


この写真の方は、肺にも肝臓にも
転移があったのですが、バイパス手術をして
2週間で退院し、そして残った時間を
自宅ですごされ、3ヶ月で亡くなりました。

でもとても満足されて最後を過ごされたそうです。

ぽちっとな
by kenzaburou41 | 2012-08-24 22:42 | ステント | Comments(2)
Commented by banibabe at 2012-08-26 22:19
うちの兄は肺がんで余命3ヶ月と言われましたが、在宅介護で好きなものを食べ、好きな事をして余命よりも長く生きる事が出来ました。病院で薬づけで余命を生きるよりも好きな事を1日でも長くする事を選びました。残された家族にはどちらが良かったのか分かりませんが、兄にはきっと自宅で過ごせたことは幸せだったと思いたいです・・・
Commented by baranokaori at 2013-09-28 06:21 x
私の父はステージ4の食道がんでした。手術ではなく放射能治療をしていました。それ自体は上手くいったのですが、食道が細くなっていたので食事が通らず、お医者さまのすすめでステントを入れました。結果的にはステントを入れてからは炎症のため熱が続き最後には突然の喀血で亡くなりました。これも寿命と今は納得していますが、ガンはつらいものですね。最初は父がかかった病気を取り上げているブログ、治療の参考にと読んでいましたが、必要のない今もたまに目を通しています。ケン三郎先生、世の食道がん患者のために日々努力してくださってありがとうございます。父の生前にご相談できればよかったなと思っております。
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