術前化学療法は、FP療法でもFAP療法でも、2コース行うのが標準となっている。ただ、1コース終了した時点で、画像検査で化学療法の効果を評価し、2コース目を行うかどうか検討する。
「化学療法を行っても、
効かない人が2~3割はいます。そのような場合には、2コース目を行わずに手術します。効果のない化学療法を行っている間に、がんが進行してしまうことも考えられるので、無駄な時間を費やさずに手術を行ったほうがいいからです」
1コース目で効果があったと評価された人は、2コース目も行った後、手術となる。効果を評価するための画像検査は、CTよりもPETのほうが診断能力の点で優れているという。
「抗がん剤や放射線で治療したがん組織は、ボリュームが変わらないのに、細胞が死んでいることがあります。このような場合、CTだとがん組織があるのと同じような画像になりますが、細胞の代謝活動をとらえて画像化するPETでは、細胞がどれだけ死んだかがはっきりとわかります」
術前化学療法が効いたかどうかは、手術をした患者さんの予後に大きくかかわっている。術前化学療法の結果が、CR(完全奏効)あるいはPR(部分奏効)だった〈効いた人群〉と、NC(不変)あるいはPD(進行)だった〈効かなかった人群〉で、手術後の生存率を比較したデータがある。図3のグラフがそれで、〈効いた人群〉は〈効かなかった人群〉に比べ、明らかに高い生存率を示している。
「術前化学療法が効かなかった人は、目に見えない微小転移が残っている可能性があります。そのため、手術しても再発する可能性が高いのです」
つまり、術前化学療法が効かなかった場合、
手術を受けてもあまりよい結果は得られないことになる。そこで問題になるのが、それでも手術を受けるのか、ということだ。
このような患者さんに対しては、手術をしても予後がよくないことが、きちんと説明されている。しかし、低いながら治る可能性があるし、手術を超えるよい治療法もないため、術前化学療法が効かなかった人でも、ほとんどが手術を選択しているという
「癌とたたかうな」「放置に限る」
というご意見もありますが
1%でも治る可能性があるかぎり皆さん戦っています
医者があきらめたら、患者さんはどうなる。