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ARDSの呼吸管理

気管食道科学会は
耳鼻科医がほとんど
呼吸器内科医
食道外科医

が母体、食道咽頭の内視鏡治療をする消化器内科医が
入ればもっといろんな議論ができるのに

でも普段聞けない呼吸器内科医の
話も聞けてかなりためになるんですわ

今日は呼吸器内科の先生のARDSの
講演があって

「ARDSの新しい概念」っつーことで
聞いて来たんですわ

ARDSといえば、記憶に新しいのが
中村勘三郎さん

「食道癌の手術=怖い」
ってイメージをつけてしまった
けども、おそらくいろんな事情があって
の結果ですわ

この定義も最近ベルリン基準
というものに変わったらしく。

「発症から1週間以内、
R/F ratioが300−200を軽症
200−100を中等症
100以下を重症

X線で両側の肺浸潤影、心不全や
結核、ニューモシスチスは胃炎、急性好酸球性肺炎、
びまん性肺胞出血等の他の疾患を否定

急性肺障害(ALI)という定義はなくなった。

1980年代、ARDSの治療に
ステロイドパルスが盛んに行われたが
今のコンセンサスは逆に予後を悪くするので
ステロイドパルスは行うべきではない。

有効だと確認されたのは
低一回換気による「肺保護的人工呼吸」のみ

この保護的換気というのは
ARDSになると、潰れた肺には空気が
送られず、健常な肺にたくさんの
空気が送られるために、いいほうの肺も
過膨張してしまう

さらにPEEPをかけないと、肺が虚脱
してしまう

ということで、換気量をふやせばいいって
わけではないことが判明し、

一回換気量を6ml/kg(すくなっ!)程度にして
PEEPは10以上かけて、最大級気圧30以下、
PCO2が溜まるのは大目に見る(80くらいまで)

っつう、ちょっとふくらませてちょっとへこませる
って人工呼吸,low tidal volume+PEEPがいいそうだ。

これにいわゆる逆CPAPであるAPRVや
BiPAPなども有効。
軽症のARDSにはNIPPV(非侵襲的陽圧換気)が有効

さらにさらに、食道癌の術式で最近
注目を浴びている腹這い。

腹這いの人工呼吸、体位変換が大変だけども

ARDSはたいてい背中側の換気が悪くなるので
その換気の不均衡を改善させるには
腹這いがいいとのこと。

ARDS発症早期からやる
1日16時間以上やる
prone position+低一回換気人工呼吸を
専門施設にかぎってやったところ、
背臥位よりも予後が向上したとのこと。

ARDSは鑑別が重要だから
発症時にCTをとる、
さらに気管支肺胞洗浄(BAL)を積極的に行うべき
だとのこと。へえ〜っ。

知らなんだ〜ッ

また「ARDSは集中治療専門医が
治療にあたるのがよく、
ECMO(膜型人工肺)やPMX等の専門治療が
出来る施設にできるだけ早い段階で
送ってもよい、とのこと。



食道癌術後も残念ながらARDSを
発症する方がいて、
ひとたび発症すると死亡率も高い
のですが,懸命にケアをしても
悪化する事があり。

「昨日まで元気だった人が急変」
もあります。

食道癌の手術、昔は半分の方が亡くなった
のが今、全国的にようやく在院死亡3%まで改善
した所。

術前,生還するのが当然、と皆信じて
手術に望むのですが
回復困難なARDSも極稀に経験します。

術前にはご家族とよく話し合って
「もし万が一のことがあったら」
を決めておく。

生還のためにやっておくべきは

禁煙とはみがき、歯科受診
による歯石歯垢除去。

呼吸訓練を真面目にやること。

ぽちっとな
by kenzaburou41 | 2013-11-01 22:56 | 術後管理 | Comments(0)
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