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国際貢献

~現在、チリで内視鏡指導中の後輩からのお便り~ 

いいこというなあ~シリーズ。


私達のように国際協力関連の仕事に携わっていると、この分野にまつわる格言・名言のようなものをしばしば耳にします。中でも私が感銘を受けたものの一つをご紹介します。
世界で水が不足している地域に井戸を掘る活動を行う、インターナショナル・ウォーター・プロジェクトという団体があります。その代表の方が話されていたのが、「ただ水を与えるのではなく、井戸の掘り方を教えよ」というものです。もとはアフリカのことわざ「飢えている友達がいたら、ただ魚を与えるのではなく、釣り方を教えよ」に端を発します。飢えに困った人がいた場合、すぐに魚を与えてしまっては同じことが再び起こりうる、釣り方を教えて魚を継続的に得られるようにすることこそが真の解決につながる、という意味です。「井戸の掘り方を教える」とはまさにこの自立支援を促すもので、国際協力の精神の真髄とも言えるでしょう。短期的な成果ばかりを追求するのでなく、長期的に現地の人々にとって何がプラスとなるか、そのためにどのようなプロセスが必要か、ということを常に考えさせられます。
私は現在チリ人医師に対して内視鏡技術の指導を行っており、彼らが日本式の技術を身に付けて日々上達するのをとても頼もしく感じております。しかしながら医療行為の指導は日本人同士であっても骨の折れる仕事です。技術指導は本来論理的に説明されるべきものではありますが、一方で内視鏡には施行者にしか分からないような感覚的な側面も少なくありません。現地ではさらに言葉や文化の壁があり、細かな点や感覚的な要素をどう伝えるかといつも頭を痛めています。
どうしても彼らが行う検査は時間が掛かってしまうため、ふと、内視鏡業務を全部自分でやってしまった方が早いのではないか、安全に終われるのではないかという思いが頭をよぎります。しかし後人が育たなければ状況は変わらず、自分たちが去った後はまた元の状態に逆戻りしてしまうでしょう。そんな時こそこの格言を思い出し「魚の釣り方、井戸の掘り方」を教え、もし自分たちがいなくなっても同じようにプロジェクトが続けられるよう、ひいては彼らが次の指導者となり日本式技術指導の担い手となれるようにと、日々勤しんでおります。
最後に、元国連難民高等弁務官の緒方貞子さんのお言葉です。
「自分の国だけの平和はありえない。世界はつながっているのだから。」



by kenzaburou41 | 2014-07-09 18:33 | 教育 | Comments(0)
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