食道がんの術後、「残った食道」てのがある。
え?全部取ったんじゃないんですか
いやいや食道ってのは咽頭から連続している消化管、管なんですね
そのちょうど胸の真ん中くらいに癌ができることが多くて
手術の時はおおよそ胸部食道〜腹部食道を胃の一部と一緒に
切除しますが
一部の食道が残ります
首の食道、頸部食道。
そんでもって胃と残った食道が繋がるんですが
術後はそのつなぎ目に、食事が詰まったり、朝4時頃酸っぱい液が上がってきて
目覚めたりと術後の生活は難儀します。
もちろん毎日ではないといいますが、
癌を体の外に退治した代償といいますか。
で、その胃には逆流防止弁が付いておりませんから
逆立ちするとゲボっと消化液が口まであっという間に
戻ってきますし
今まで通り、というわけにはいきません
のどの嫌〜な感じ、というのが特に不快だという方が多いです。
時に消化液は逆流性食道炎を引き起こしまして、
ではその食道炎が続くとどうなるでしょう
酸やアルカリの刺激に強い粘膜に置き換わる
これが円柱上皮化
バレット。
そもそもバレット食道は 食道切除した後にできたものをいうわけではないので
残食道にできた円柱上皮を「バレット様食道」というらしいのですが
欧米でいうバレット食道が癌の発生母地だからといって
同じ様に、残食道にできた円柱上皮から
すぐ癌ができるのか?
できたからといってショックを受けることなのか?
答えはノーでございます。
食道癌で手術を受ける、ということはステージ1〜3の進行した状況ですし
まずはそちらの再発のほうが心配です。
5年経って食道癌が治ったことがわかって
さあ次はなにが心配?
って時に「頭頸部がん」「肺がん」「胃がん」「大腸がん」などの新しいがん
そして高齢者では誤嚥性肺炎
バレット食道がんができて、それが命に関わるのはおそらく食道がんを克服して
20年くらい経った時でございましょう
食道炎が悪化しないようにするにはPPIでございます。
あるいは今新しいP-cab、タケキャブでございます。
食道がんの患者さん、5年、10年経ってもみなさん
PPIは止めないできっちり飲んでる方が多いです。
そして調べてみると、
食道がんを克服して5年以上経過観察されて
いた食道がんサバイバーの方
意外に残食道のバレット様食道になってる方が少ない。
逆流性食道炎にもなってない方もいる
へ〜っ
患者さん偉いっ!
と内視鏡を見返しながら、ポンと手を叩いた年末でございます。
みなさま、おもちは吻合部に詰まりやすいので
ご注意くださいませ。