人気ブログランキング | 話題のタグを見る

声帯を傷つける

食道癌手術の合併症の1つに反回神経麻痺による声帯のうごきが
悪くなる、声帯麻痺というものがあり

これは反回神経という声をうごかすことに関連する神経

脳からでた迷走神経っつう神経から左右2本
右は鎖骨下動脈をくるりと回って喉頭へ
左は大動脈弓をくるりと回って喉頭へ

左の方が長い距離を走ります。

でもって、この神経のやっかいなのは神経のすぐそばの
リンパ節

番号でいうと106番ですが

食道外科医にとってはこの106という数字がとっても大事な数字で。

オペ室のロッカーの番号は必ず106番を使うという先生もいるほど

106に気を配ります。

この神経のまわりにもっとも転移が起きやすいので
その神経を残してリンパ節だけを回収してきます。

患者さんに術後こえが
かすれるという後遺症がのこると


「どうも私の場合は手術のときに神経を傷つけたらしい

と表現されることがありますが
決して傷をつけたわけではなく

ひっぱったり、さわったり、押したり、

きわめて愛護的にあつかっているのが普通です。

結果的には麻痺がおきて、声がかすれてるんで

「しくじった」 みたいに思われるかもしれませんが

決して食道外科医、傷をつけてるんじゃなくてしっかり
癌を神経の周りからはがしてきている、というのが本当の所で

なんていえばいいんでしょう

先生が失敗した、みたいな表現はなんとかならんものか。心が痛みます。

幸い最近では「神経刺激装置」が導入して、極力麻痺をつくらない
ための努力をしております

そうはいっても結果がすべて。

がんをきれいに取ってきてかつ、神経は温存できる

これぞ理想なり





by kenzaburou41 | 2020-12-09 23:42 | 手術の合併症の話 | Comments(0)
<< 徳島食道学会2020 小林和男さん >>