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胸骨後か後縦隔か

食道がん手術で、食道を切って胃をつりあげるのですが、
胸板のすぐ後ろ、心臓の前を通す「胸骨後」再建と
もともと食道のあった場所、心臓の後ろを通す 後縦隔再建のおもに2つのルートが採用されます。

それぞれいいとこ、わるいとこがありますが、
実際、短期的にどういう影響があるの?を調べて見た論文がございまして。

Kikuchhi H, Hiroya Takeuci et al . Ann Gastrointestinal surg 2022;6:46-53

「Impact of Reconstruction Route on Postoperative Morbidity After Esophagectomy
:Analysis of Esophagectomies in the Japanese National Clinical Database]

2016年から2018年にかけて日本のNCD データベースから
胸骨後 胃管再建6308例と 後縦隔胃管再建3478例の2つの術式を比べまして、
どっちがいいかを比べてみました。という報告

出血量 胸骨後 220mlにたいし、後縦隔 166ml   
縫合不全 胸骨後 13.8% にたいし、後縦隔 11.7%  
手術創感染 胸骨後 14.9% に対し、後縦隔 8.4% とこの3つは後縦隔に軍配。

肺炎は 胸骨後 12、2%に対し後縦隔 13.7%とこちらは胸骨後に軍配。

食道癌の手術を年間何十例もやってる施設だと縫合不全は1−2%という施設もありますので
縫合不全10%以上というのはまだまだ改善の余地あり

しかし手術死亡は全体で97例で1%、残念ながら手術合併症で亡くなるかたがおりますが
昔はもっともっと高かったことを考えると
日本の食道癌手術は世界的にも安全性の
高い治療だと思います。


「食道切除術における再建法として,後縦隔再建と胸骨後再建のどちらがよいか?」この臨床上大変重要な課題に対してこれまで術者や施設ごとの考え方もあり,一定の見解は得られていませんでした.今回著者らはこの長年の疑問を解決すべく,2016年から2018年にNCDに登録された後縦隔再建3478例と胸骨後再建6308例を比較検討しました.その結果,術後縫合不全とSSIは後縦隔再建で有意に少なく,肺炎は胸骨後再建で有意に少ないという極めて興味深い結果が示されています.腫瘍進行度や患者の併存疾患も考慮する必要がありますが,食道外科医にとっては再建法選択の一助となるインパクトのある結果となっています」とAnnals of Gastroenterological Surgery associate editor 竹内教授のコメントです

どっちを選ぶか、施設ごとに流儀があると思いますが
消化器外科医なら読んでみよう〜






by kenzaburou41 | 2022-04-02 06:51 | 手術の合併症の話 | Comments(0)
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