千田先生:現在の体調はいかがですか?
秋野さん:とても元気で食事は問題なく摂れていますし、倦怠感もありません。抗がん剤治療の影響で足首から下が少ししびれたり、耳鳴りが起こったりすることもありますが、それ以外に生活の支障はなく、以前とほとんど変わらない生活が送れています。
千田先生:元気に過ごされているとのことで安心しました。食道がんと診断された経緯についてお聞かせいただけますか?
秋野さん:2021年12月頃、喉に何か引っかかるような違和感を感じました。毎年受けている人間ドックで異常は見つからず、内視鏡検査でも問題はありませんでしたが、違和感が続いたので耳鼻科に受診したり血液検査をおこなったりしました。それでも異常は見つかりませんでした。その後、喉に梅干しの種が詰まっているように感じる「ヒステリー球」という症状があると聞き、自律神経の乱れが原因かもしれないと考え、自律神経を整えるための対策も試みましたが、一向に良くなりませんでした。
千田先生:なかなか違和感の原因が見つからなかったのですね。
秋野さん:はい。その後、2022年5月頃に水分を飲むこともつらくなってきたので、さすがにおかしいと思い、改めて内視鏡検査を受けたところ、すぐに紹介された病院へ行くように言われ、がん専門の病院で再検査をすると明らかにがんと思われる映像が映っていました。医師に「これはがんですか?」と尋ねると「はい、がんですね」とあっさり言われました。
千田先生:診断が確定するまでに時間がかかり、水分を飲むのも困難になった段階でようやく判明したということですね。
秋野さん:はい。そして、2022年6月に頸部食道がんのステージ3であることがわかりました。
千田先生:食道がんと診断されたとき、どのような気持ちでしたか?
秋野さん:告知の際、特にショックは感じませんでした。仕事柄、がんの告知シーンを演じることもあり「頭が真っ白になった」というような描写がよくありますが、私の場合は違いました。半年間も原因不明の状態が続いていたので「ようやく原因がわかった」という安堵感のほうが大きく、治療について考えることに意識が向いていました。
千田先生:怖くなるというより、治療に向けて前向きに考えられたのですね。診断を受ける前は食道がんに対してどのようなイメージをお持ちでしたか?
秋野さん:がんは他人の病気という感覚でした。友人や家族が罹患することはあっても、まさか私が食道がんになるとは思ってもいませんでした。
千田先生:食道がんに罹患してからイメージに変化はありましたか?
秋野さん:今では、がんは非常に身近な病気だと認識しています。私の通っていた病院では、毎日1800人もの患者さんが診察を受けていますし、2人に1人ががんになる時代と言われていることも納得です。
千田先生:そうですね。誰がなってもおかしくない病気と言えると思います。
秋野さん:食道がんとはどのような病気なのでしょうか?
千田先生:食道は空気の通り道である気管の後ろ側にあり、口から入った食べ物を胃へと運ぶ臓器です。この食道に発生するがんを食道がんと呼びます。発症の男女比は8:2程の割合で男性に多く、罹患率は男性が約50人に1人、女性は約200人に1人と言われています。
秋野さん:その性差は何が影響しているのですか?
千田先生:食道がんの主なリスク因子として、飲酒や喫煙が挙げられます。男性は女性よりもこれらの習慣がある割合が高いため、発症率が高くなると言われています。
秋野さん:そうなのですね。確かに私が入っている食道がんの患者会でも男性の方が多い印象です。近年、女性も増えているという話を耳にします。
千田先生:統計では男性の方が多いと言われていますが、女性の飲酒率も増えているため、女性も発症する可能性は十分にあると思われます。
秋野さん:頸部食道がんと一般的な食道がんには、どのような違いがあるのでしょうか?
千田先生:食道は大きく、頸部食道、胸部食道、腹部食道の3つに分けられます。頸部食道がんは、食道の入り口付近にできるがんで発生頻度が低いものの、治療の難易度が高く、治療の際には気道や発声機能に影響を及ぼす可能性があります。頚部食道がんも食道がんの一種です。
秋野さん:食道がんの初期症状にはどのようなものがありますか?千田先生:初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。そのため、早期発見が難しいがんの一つです。
ステージ2~3の段階まで進行すると、水分や食べ物の飲み込みにくさや声のかすれ、首のリンパ節の腫れ、体重減少などの症状が現れることがあります。
秋野さん:確かに私も喉の違和感から始まりましたが、当初はそこまで深刻なものとは思いませんでした。
千田先生:特に頸部食道がんは食道の入口付近にできるため、内視鏡検査でも発見が難しいがんです。内視鏡医も注意深く診ている点ではありますが、特に喉に違和感があるなどの症状がある方は重点的に診てもらうように伝えることも重要かもしれません。
秋野さん:食道がんの原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
千田先生:食道がんは遺伝の要素が比較的少ないがんです。がんになるメカニズムとしては、外的な刺激により慢性的な炎症が起きて、炎症により傷ついた細胞を修復する過程でがん細胞が発生します。そのため、炎症を起こすようなものがリスクだと言われています。具体的には飲酒や喫煙に加え、熱い飲食物が挙げられます。
秋野さん:辛いものはいかがでしょうか?
千田先生:よく聞かれますが、食道がんの原因であるという科学的根拠は示されていません。
秋野さん:そうなのですね。ほかにも、何か原因はあるのでしょうか?
千田先生:慢性的な逆流性食道炎により、食道の粘膜が胃の粘膜のように変化するバレット食道という状態になると、稀ながんですが食道腺がんのリスクが高まります。特に、食道裂孔ヘルニアがある方は胃酸が逆流しやすく、注意が必要です。
秋野さん:実は私の場合、お酒が原因ではないかと先生に言われました。
千田先生:飲酒はかなり食道がんのリスクを高めます。特に日本人の場合、お酒に含まれるアルコールの分解をサポートするアルデヒド脱水素酵素が遺伝的に欠損している人が多いと言われています。お酒を飲むと顔が赤くなる、いわゆる「フラッシャー」の人です。このような方は日本人の20〜30%いると言われており、飲酒の量が多くなると食道がんのリスクを非常に高めます。
秋野さん:私の場合はフラッシャーではありませんでしたが、
強いお酒をロックで飲むのが好きでした。アルコール度数も関係するのですか?
千田先生:アルコール度数の高いお酒は食道の粘膜への負担が大きいため、結果的に慢性的な炎症を引き起こすリスクがあります。絶対に飲酒をやめることは難しいかもしれませんが、アルコール度数や量、頻度は気をつけるべきであると考えています。
秋野さん:私も今後気をつけるようにしたいと思います。
ぽちっとな