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内視鏡的拡張術

日本人の2人に1人ががんを経験するといわれています。がん患者と向き合う医療者は、日常の診療の中で何を思い、感じているのでしょうか。国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)の医師らが語ります。今回は、食道がんなどの消化管がんの内視鏡治療を専門にしている消化管内視鏡科長の矢野友規さんです。

一番大切なことを教えてくれる人

私は、消化管がんの内視鏡治療を専門にしています。治療の基本は外科手術ですが、転移のリスクが少ない早期がんは内視鏡で治すことができます。内視鏡治療は体に傷をつけず合併症が少なく臓器を温存するため、治療後も以前と同じ生活ができることがほとんどです。

 内視鏡治療後でも合併症が原因で食事ができなくなる患者さんがおられます。合併症に対しても、その症状改善を目指した内視鏡治療を行います。この治療は長期間繰り返し行う必要があるため、数年に及ぶことがあります。その間は食事を楽しめず満足に栄養をとることができないので、点滴などを行います。

 数年間、何十回と治療にお見えになるたびに、食事がとれなくてつらいはずなのに「笑顔」で私に接してくれた患者さんがおられました。治療後に「おいしい食事」がとれるようになった際には、その幸せをさらにすてきな「笑顔」で報告してくれました。

 医者に一番大切なことを教えてくれるのは、教授や先輩、教科書や論文ではなく、患者さんだと教わったことがあります。私はつらい状態の患者さんの診療を通じて、「笑顔」がもたらすパワーと癒やしの効果を教わりました。また、患者さんに「おいしい食事」を楽しんでもらいたくて、内視鏡医をしていることを再認識させられました。

 患者さんの「笑顔」で私が元気になるなら、患者さんはなおさらだろうと思い、なるべく「笑顔」で接するように心がけています。もちろん、医者も人間なので難しい時もありますが。

消化管がんとは

 消化管がんや内視鏡治療について、話を聞きました。(聞き手・道丸摩耶)

――消化管がんとはどのようなものですか。

 食べ物を消化するための通り道である消化管にできるがんの総称で、食道がん、胃がん、大腸がんなどが該当します。私は主に食道がんを診ています。食道がんの患者さんは、飲酒や喫煙をしている人の割合が高く、男性が多いです。年齢では、70歳代前半の男性が一番多く、70歳代後半と60歳代後半の男性が続きます。

――食道がんの治療は、どのように行うのでしょうか。

 外科手術や内視鏡で、がんを取り除く治療が中心です。手術ができないくらいがんが進行している場合は、抗がん剤や放射線による治療を行います。がんが早期で深度が浅い場合は、内視鏡による治療となることが多いです。

――内視鏡で治療する例はどのくらいありますか。

 食道がん患者の約20%です。胃がん検診をエックス線ではなく、内視鏡で実施する自治体や企業が増えており、その際、早期の食道がんが見つかるケースが増加しています。こうした事情もあって、内視鏡での治療が可能となるケースが増えつつあります。

 内視鏡治療は、体にメスを入れる外科手術よりも体への負担は軽くて済みます。ただ、がんを切除した痕の部分で炎症が起きたり、傷が治る過程で食道粘膜が収縮したりして、食道が狭くなる食道 狭窄(きょうさく) が起きることがあります。

 食べ物の通り道が狭くなるため、食事がしづらくなったり、詰まってしまったりする恐れがあります。流動食しか食べられなくなる人もいます。

食道が狭窄してしまった場合は?

――狭窄した食道は、どのように広げるのでしょうか。

 風船のような医療機器を使った「バルーン拡張術」を実施します。内視鏡で状態を確認しながら、食道の狭くなったところでゆっくりと風船を広げていきます。

――治療には時間がかかるのでしょうか。

 1回の内視鏡治療で広がることは少なく、数回にわたって治療する例が多いです。バルーン拡張術の場合、2週間に1回、もしくは月1回の頻度で受診してもらい、治療に数年ほどかかることもあります。


↑いいこというなあ~ 

ぽちっとな


by kenzaburou41 | 2025-05-18 19:16 | 内視鏡治療 | Comments(0)
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