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中咽頭癌へのワクチン接種

こちらのサイトから

日本全体では現在、1年間に約5000人があらたに中咽頭がんの診断を受けており、男女共に明らかな増加傾向にあります。大阪大学のチームが大阪府がん登録のデータをもとに調べたところ、10万人当たりの中咽頭がんの罹患数(年齢調整罹患率)は、1990年に男性が1.2人で、女性が0.2人でした。それが2015年には男性が2.5倍の10万人当たり3.0人、女性が3倍の同0.6人にまで急増していることが分かりました。

人口10万人あたりの中咽頭がんの罹患数(年間調整罹患率)

人口10万人当たりの中咽頭がんの罹患数(年間調整罹患率)のグラフ出典:大阪府がん登録

この間、日本人の喫煙率は下がっているので、増加はHPV感染の影響と考えられます。現在は新たに診断される患者の半数以上がHPV関連だと見られています。


HPV関連中咽頭がんをいかに予防するか?HPV関連中咽頭がんの予防にはHPVワクチンの接種が有効と考えられています。HPVワクチンというと、女性が対象だと思う人もいるでしょう。しかし、ワクチンはウイルスの感染を防ぐ効果がありますから、男性がHPVワクチンを接種することで、自身にも発生しうる中咽頭がんなどのHPV関連がんを防ぐことができます。また男性から女性にHPVを感染させるリスクを減らすこともできます。

実際に海外の先進国ではHPVワクチンは男女共に定期接種になっています。中でもオーストラリア、カナダ、イギリスは10歳前後の子供を対象に学校での集団接種を実施しています。このため、2022年8月時点の接種率(完遂率)は▽オーストラリア(定期接種対象は12~13歳の男女)=女子81.8%、男子78.8%▽カナダ(同9~13歳の男女)=女子87%、男子73%▽イギリス(同12~13歳の男女)=女子82.8%、男子77.5%――と非常に高いのです。オーストラリアやイギリスからは定期接種開始後、HPV感染率や子宮頸がんの発生率が減少したことが報告されています。

メリカやフランス、ドイツは医療機関での定期接種を実施しています。22年8月時点の接種率は、アメリカ(対象は11~12歳の男女)=女子61.4%、男子56.0%▽フランス(同11~14歳の男女)=女子37.4%、男子はデータなし▽ドイツ(同9~14歳の男女)=女子47.2%、男子5.1%――です。一方、日本は定期接種の対象が12~16歳の女子のみで、接種率はわずか7.1%しかありません。

欧米各国のHPVワクチン接種プログラム

(2022年8月時点)
オーストラリアアメリカカナダフランスイギリスドイツ日本
現在の対象
ワクチン
9価9価女子:2価/4価*/9価
男子:4価*/9価
(*発売終了)
2価/9価
(初回接種は9価)
4価*→9価
(*発売終了)
2価/9価2価/4価
接種
プログラム
開始年
2007年(2018年より9価のみ)2006年(2017年より9価のみ)2007年~※州により異なる
(2015年9価導入)
2007年2008年2007年2013年(2010~2012年
は特別事業)
実施法学校接種医療機関での接種学校接種医療機関での接種学校接種医療機関での接種医療機関での接種
定期接種
コホート
12~13歳男女※州により異なる11~12歳男女9~13歳男女※州により異なる11~14歳男女(男子2021年導入)12~13歳男女(男子2019年導入)9~14歳男女(男子2018年導入)12~16歳女子
接種率
(完遂率)
女子:81.8%
男子:78.8%
女子:61.4%
男子:56.0%
女子:87%
男子:73%
女子:37.4%
男子:データなし
女子:82.8%
男子:77.5%
女子:47.2%
男子:5.1%
女子:7.1%

日本は、地域保健・健康増進事業報告「定期の予防接種被接種者数」(第78回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会・資料に掲載)より2020年度データを、日本以外の国はWHO Human papillomavirus (HPV) vaccination coverage (Accessed Aug.2022)より2021年データを示した。

横浜市立大学 折舘伸彦先生作成

HPVワクチンの接種によって、HPV感染リスクがどの程度減るのかを米国人をモデルにシミュレーションした論文※1があります。この論文によると、12歳時点のワクチン接種率を男児、女児共に40%とし、これを現在から維持すれば、HPV関連中咽頭がんの患者の多くが感染している16型の感染リスクを全体で約75%減少させられるといいます。接種率80%を男女共に維持できると、16型の感染減少率はほぼ100%に達し、ウイルスの撲滅が可能になると考えられています。

さらに感染リスクだけでなく、HPV関連中咽頭がんの発生をワクチン接種でどの程度減らせるのかを予測した論文※2もあります。この論文によると、米国で男女ともワクチン接種をまったく実施しない状態を続けると、2030年ごろから男性10万人あたりの中咽頭がん罹患数は10人程度になるといいます。これが現状のHPVワクチン接種率、女性約60%、男性約50%を維持すると、2100年には10万人当たり4~5人に減少させることができると予測しています。接種率が増加すれば、さらに中咽頭がんの発生率が減少することも予測されています。

同様に日本国内でも今から男女共にワクチン接種率を上げていけば、やがては中咽頭がん発生率減少の効果が現れ始めると考えられます。逆に言えば、今から対処しなければ将来の子供や孫の世代に禍根を残しかねません。

※1Brisson M et al. Lancet Public Health. 2016;1:e8-e17.

※2Damgacioglu H et al. Lancet Reg Health Am. 2022; 8:100143.


せっかくピロリ除菌で胃癌減ったんで

ぜひ中咽頭癌へのワクチン予防も政策を ぽちっとな




by kenzaburou41 | 2025-05-26 21:44 | 間違いだらけのがん検診 | Comments(0)
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