カテゴリ:手術の合併症の話( 42 )

NCD

今回の消化器外科学会にて

2011年1〜12月

全国713施設5354例の食道癌手術成績
が明らかになりまして。

平均年齢66歳 男性が85%
約6割がアルコール常用者

術後合併症発生率は約4割で

最も多いのが肺炎で15%

ついでSSI、

縫合不全も全国レベルでは13.3%も発生。

敗血症1.8%

術後30日以内死亡 1.2%
在院死亡      3.4%

死亡した患者の要因

年齢、術前の喫煙歴,ADL不良、体重減少
があがり、さらにCOPDが在院死亡の
リスク因子になっていたとのこと。

他国と比較すると、米国の3%、英国の4.3%
にくらべて日本の1.2%はずばぬけて成績がいい。

とはいえ、在院死亡では3.4%の方が
亡くなっている


手術は危ないってレッテルを貼ると、
外科医は条件のいい患者ばかりを手術に
回すようになるし

ちょっとでもリスクのある患者は
うちではできないから他をあたってくれ

と成績を良くしようとする。

でもそれでは医療の進歩はなく
アクセルふまずにブレーキばかり
の医者になる。

成績を知った上で、リスクを絞り込み
丁寧に手術をすることで、皆にその
恩恵が得られることが目標。

肺炎と縫合不全をいかに減らせるか。

一人の天才外科医の手術より

メディカルスタッフを信頼し
お互いを認め合って任せる

チーム力ですわ


ぽちっとな
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by kenzaburou41 | 2013-07-21 23:58 | 手術の合併症の話 | Comments(0)

心タンポナーデ

心タンポナーデとは
心臓と心外膜の間に水が溜まり
心臓が圧迫されて心不全が進行する
ことをいい

放置すれば死にいたる怖い病態です


ケン三郎の長年の食道癌術後管理で1回だけ
それを経験したことがあります


手術のときに癌が心のうに浸潤していたので
心のうを合併切除したのですが

その夜、いつもは血圧がさがったら
輸液の負荷や昇圧剤で対応すれば
血圧があがる

いつものパターンかあ、と当直していて

昇圧剤をちょっと調整して
さあ寝よう、とおもった午前2時。


ところが何をやっても血圧がさがる。

おかしいな、、ドレーンからも出血はない、


術中麻酔科がちゃんと輸液も入れているし
大出血したわけでもない

なぜ??


血液検査にだしても貧血もないし


心筋梗塞の所見もない


なのに血圧が下がる  うーん、、、

当直中頭をひねって考えても
原因がよくわからない、、


そうこうしているうちに血圧がでなくなり
徐脈になってあれよあれよと心停止

え、、えええっつ


心マ!


胸骨後再建直後の心マ、だれもやりたくないけど
こればかりは、、、と対応し
なんとかその場は復活


循環器内科にその心マのあとに
来てもらって、原因を診てもらったけど
よくわからない

うーん、、なぜ??


胃管壊死にしても直後にこんな状態にはならないし

結局CT取ろうってことになり
状態が落ち着いたところで撮影すると

心のう水がたくさんたまっている


心のうを合併切除した穴。

どうもその開いたところから胸水が流れ込んで
出てこなくなり心臓が圧迫されてしまった?

そんなこともあるのかと。

結局緊急再手術で、回復しましたが

理由がわからない合併症ほど怖いものはありません


「想定内」の引き出しをふやし

何が起きてもその引き出しを開けるようにしておかねば。


心のうは合併切除するなら大きくあける

これが現在の対策です。
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by kenzaburou41 | 2012-12-27 08:29 | 手術の合併症の話 | Comments(0)

早期合併症

術中の合併症でもっとも怖い合併症は
大出血です。

食道は胸,腹、頸の3領域を
扱いますので、それぞれの領域で
血を止めるのに難渋することがあります

それから心臓が不整脈を起こして
心臓がプルプル震える、
最悪、止まることがあります

元気そうにみえていても手術の負担が
大きく突然VTになったり、、

術中に分かるより術前にそういうリスクが
あるかを調べておいた方が安心なので
出来るだけ心臓のことをよく調べてから
手術に望みます。

「手術が成功したか?」を術後すぐに
聞く方がいますが、成功したかどうかは
後からわかるので正しくは
「予定通り終わりました」

術後直ぐの合併症は不整脈と出血、
低血圧、乏尿です
これも皆さんが寝ている真夜中に
起きるので,術後管理はこうしたことが
起きないかをチェックして点滴の量、昇圧剤を
調整します

人工呼吸器の管をぬいて確認することは
「声がかすれていないか?」
2つある反回神経がきちんとうごいているか
どうか?2つとも麻痺した場合は息が
できなくなるため、気管切開をおく必要
があります

術後2〜7日

胃管壊死、縫合不全、膿胸、肺炎、無気肺
MRSA腸炎、ARDS、敗血症
まさにばい菌との戦いです

7日たって食事が始まりそうであれば
ほぼ順調

でもなにかしらの問題が起きるのが
通常です。すんなりいくかたは50%
あとの50%のかたは何らかの問題が
起きますが、程度は人によりけり

想定内,想定外、いろいろです。

1年経ってからは再発がなければ
大きな問題が起きる事はありません

医者は起きうる最悪の結果を常に
想定しながら、いろいろな手を
うって回復にむかうように策を練ります

しかし主体は患者さん自身が
病気と向き合って、これをなんとか
解決しようと手術前から真剣に取り組む
ことが最も重要です


禁煙,禁酒、呼吸訓練、うがい、歯磨き、
歯科受診。

あらゆる準備を怠らぬよう。

ぽちっとな
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by kenzaburou41 | 2012-12-18 23:08 | 手術の合併症の話 | Comments(0)

何もしないとどうなるか?

食道癌がみつかって何もしないと
どうなるか?

癌が進行して食事がとおらなくなり
いずれは死をむかえますが、
ある程度、時間的な余裕が
ありますので

「手術しないほうが
長生きしたであろう」ということ
が起こりえます。

手術をしない方法でどんな方法が
あるかというと、ステントという筒を
入れる方法

これが一番簡便で,治療時間もすくなくて
すみますが、癌を治す治療ではないので
最初からこの治療を希望される方は
少ないです。

治ることをめざすと現在、もっとも
信頼性の高い治療が
抗がん剤+手術

その次に抗がん剤+放射線治療
ということになります

いずれも、癌を治す強力な治療ですが
自分の体にも負担がかかる治療ですので
全く元通りの健康な体を取り戻す治療
ではありません

放射線治療、手術、抗がん剤

この3つをうまく組み合わせて
体の負担を最小限に治療を
組み立てる事が求められています

これまでの治療成績の比較から

以前より放射線治療が選択される
ことが少なくなっているかもしれません

外科医は最新の注意をはらって
手術の侵襲を減らす努力を
怠ってはならない状況ですし

ある特定の施設に多数の患者が
殺到すれば、その施設の扱える
限界を超えて,目がいきとどかなく
なる可能性もあります

ある特定の施設だけでなく
その周りにも同じような医療
レベルの治療ができる病院を
いくつか、というのが理想ですが

食道癌自体がそう多い病気ではないので

診断から治療、術後管理まで
すべてが充実した環境つくり、

それには病院内のいろんな
専門家を結集して治療にあたる
必要があります


でもやっぱり手術が
うまくいってこその
術後管理

期待にこたえねば。

ぽちっとな
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by kenzaburou41 | 2012-12-09 13:53 | 手術の合併症の話 | Comments(0)

前を向く

合併症で患者さんがなくなると
ほんとに悲しい

うまくいくと信じて手術したのに

縫合不全、膿胸、MRSA肺炎、腸炎、胃管壊死、そしてARDS

起こしたくない合併症ととなりあわせ

ずいぶん昔よりは安全にできるように
なった食道の手術も

完全に死亡率を0にはできない

食道癌に たちむかった医師も患者さんもスタッフも
みんな頑張って一つの目標にむかっていたわけだし

外科医がここで、気落ちして、手術はやっぱり控えようとか

自信をうしなったり、周りからの目に耐えられなくなって
しまって病院をやめるとか、、

受けてきたであろうプレッシャーを考えると

いつか我々外科医、自分の身にもふりかかる
ことかもしれません。

これまでたくさんの人を救ってきたのだから

前を向いてがんばりましょう

ここでくじけず

明日のさらにいい医療をめざして。


ぽちっとな
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by kenzaburou41 | 2012-12-07 13:15 | 手術の合併症の話 | Comments(0)

ARDS

来春こけら落としする歌舞伎座の舞台を踏むことなく57歳で旅立った歌舞伎役者、中村勘三郎さん。今年7月には食道がんの大手術を乗り越え、約4カ月にわたる壮絶な入院生活を送った。命を奪った急性呼吸窮迫(きゅうはく)症候群(ARDS)は現代医療でも退治できない“大悪党”だった。

 最後の舞台となった7月の「信州・まつもと大歌舞伎 天日坊」を演出した串田和美氏は、「お見舞いに行った時は、もう話ができない状態でした。今まで何度も奇跡を起こしてきた人だから、また奇跡が起きると信じる気持ちと覚悟する気持ちとの間で揺れ動いていました」とコメントした。

 7月27日に12時間に及ぶ食道がんの大手術を乗り越え、一度は病院内を歩けるほどに回復。再発予防のため抗がん剤治療を受けていたが、11月に肺炎を発症し、急速に呼吸不全に陥った。

 専門の治療を受けるために、二度も病院を転院しているが、家族は「考え得る最高の治療をしていただきました」としている。

 この急激な悪化こそARDSの特徴だ。杏林大学医学部付属病院呼吸器・甲状腺外科の呉屋朝幸教授が説明する。

 「原因はいろいろあるが、ARDSでは肺の酸素交換ができなくなり、人工呼吸器の補助があっても呼吸ができない状態になります。最終的には全部の肺機能が破壊され悪くなるときには1日でも急速に悪化します。ご本人も医療従事者も、どうしてこんなに急激に悪くなるのか理解できないほど症状が進行することがあるのです」

 勘三郎さんは、最終的に日本医科大学付属病院で治療を受けていた。経験豊富な医師も、肺の状態が悪化しそうになるのは予測可能だが、ARDSの治療そのものは難しいという。

 関係者によると、勘三郎さんの病室には人工呼吸器と人工肺が設置され、さまざまな管が体を貫いていた。

 「人工呼吸器は、気管にチューブを入れて、機械から酸素を肺に送り込みます。病院ではどこでも使用されている方法です。しかし、人工肺は、人工心肺装置のように、体外に血液を取り出して酸素をつけて体内に戻し、肺を全く使うことはありません。極めて特殊な場合に使用され、一時的に肺の機能の負担を軽減するか、あるいは、肺の機能がすでに低下した場合が想定されます」(呉屋教授)

 ARDSには治療薬があるにはあるが、急激に悪化する症状を食い止めることは容易ではない。

 ARDSの引き金となったのは、食道がんとみられている。

 「一般的にARDS発症の基盤になるのは肺炎で、食道がんの場合は放射線治療や抗がん剤治療の後です。炎症などで肺の酸素交換機能が低下し、結果として症状が悪化してしまう。まるで、肺の中で大規模破壊が起こるように、食い止めることは難しい」と呉屋教授はいう。

 勘三郎さんは当初、息子の勘九郎(31)と七之助(29)が出演する京都・南座公演に駆けつけることを励みとし、それが無理なら来年2月の博多座公演へ、と思いをつないできた。

 好江夫人がマスコミを通じて明かした経過報告には「来年4月の歌舞伎座柿(こけら)落としに出演することを、心の拠り所とし、癌晴って参りました」と綴られていた。「癌」が「晴れる」日を願って、正面から立ち向かい力尽きた。
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by kenzaburou41 | 2012-12-07 07:33 | 手術の合併症の話 | Comments(0)

規模

患者さん、ご家族とも

「手術」と聞くと「怖い」「痛い」「死ぬかもしれない」
と悪いことも考えてしまいますが

今までの状況をうまくいけば一気に解決できるかもしれない、
といういい点ももちろんあります


手術にも規模があり。

1)放射線治療後のサルベージ手術

2)右開胸開腹食道亜全摘

3)鏡視下食道切除


4)左開胸開腹下部食道切除

5)胃全摘術

6)食道バイパス術

いずれも、食事がとれなかった人をとれるようにするという目的に

どのレベルまで癌を体外に摘出するか?
で手術の規模も違います。


このうち1~3)は別格の手術であり


「急いで手術をしたほうがいい」といわれてきた患者さんもご
家族も「早く、とにかく早くやってくれ」といいますけど

「早く危険にさらされる」可能性もあるわけで


合併症によっては命を落とすこともある手術です、
「もし万が一、」のこともよく話し合っておく必要もあります。

一方で気管のまわりをいじらない、4)5)6)
は1~3)の手術に比べるとリスクは半分くらいに
なる

とはいえ、手術はなにが起きるかわからない、予期しない大出血も
あれば、よっぽど注意をしていても、合併症がつきものです

しかし、手術=全部危ない、というわけではなく


そうでなければ病棟に患者があふれて、ベッドが埋まるわけで

なんやかんやいいながら、ほとんどの患者さんは
元気に退院します



一歩踏み出す勇気と


手術をしない場合のメリット、デメリット。


みんなでサポートです。
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by kenzaburou41 | 2012-10-17 21:46 | 手術の合併症の話 | Comments(0)

症例数が多いほど

食道癌の手術

極めて高度な技術を要するので

症例を集約化しようという動きもあり


「たくさん手術している施設のほうが少数しかやってない施設
よりも成績がよい」


ということが示されて


中には年間100件を超える手術をこなすところも。。


100件つーことは週2件は確実にやる、
時には3件もあるかも



すべてがすんなりいけばいいけど


食道癌の術後


ひとたび、合併症を起こせば、懇切丁寧に
診ていかないと致死的な状態にもなりうる



患者さんやご家族は

「うまく行って当たり前」


死亡率2%

と聞いても、まさかうちがその2%にあたるわけない


と思っているだろうし


「うまくいくはず」とおもって手術をしているのに

「うまくいかない」ときの外科医の心情となると


心が折れる時もしばしば。。。



がんばってるのに、、、、何とか好転しないものか。



難しい症例にチャレンジすれば、その分、リスクも背負う



心が折れそうな時~っ


全国の仲間ががんばっているのを見てまた、がんばろうと。
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by kenzaburou41 | 2012-10-06 00:44 | 手術の合併症の話 | Comments(1)

胃管壊死判明時期

せっかくつないだ胃や腸が腐る

その時期ですが、術直後に判明するわけでなく

あんまりたくさん経験があるわけではないですけど
術後3~7日の間ではないでしょうか

ごはんが食べられて退院してから起きることは
ありません。

術中の出血や長時間手術は体の負担が大きくなる
とともに、

水分バランスも崩れ、血圧が下がり、胃への血流が
悪くなり

順調そうに見えていたのに,あるとき急に、理由が分からない
状態の悪化、発熱、頻脈、

「何か起こっているけど,なにか分からない」

原因がよく分からないけど、状態がおかしい

というのが最も怖い状態です。


調べるには、内視鏡で胃管の色調を直接確認する

CTで胃壁の厚み、造影剤を入れて造影効果があるかどうか?

などが参考になります。

ケン三郎が経験した方は術後1週間経ってから
胃管壊死がおき、胃管と気管が交通

これほどしんどい合併症はありません。。

二度とあのつらい思いを本人にも家族にも
させたくない

壊死した胃管を早く切除していれば治せただろうか

そのタイミングはどの時点だったのだろうか

苦い経験を心の奥に止めながら

外科医は前を向いて。


ぽちっとな
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by kenzaburou41 | 2012-09-20 21:14 | 手術の合併症の話 | Comments(3)

MMカンファ

外科が「食道、胃、大腸、肝胆膵,乳腺、血管」
と専門分野で分かれて、今は各診療科ごとに
問題を解決してるのですが

昔、週に一度、その病棟で術後もしくは
再発やらなにやらで状態の悪い人、
もしくは亡くなった患者さん

その問題が何か?

ってのを突き詰める
「mortalityand Morbidity カンファレンス」
てのがあって

病棟医長がそれを前もって調べて、
週に2人か3人が対象になる

術後管理で忙しい上にその
カンファレンスの準備もしなきゃ
いけないっていう、、会がありまして。

「術後管理だけでも大変なのに〜
ってかなり不評だった、MMカンファ」

2000年頃の記録がでてまいりました。

2月4日 食道癌術後発熱 右腎梗塞

3月10日 食道癌術後肝硬変 腹水多量
MRSA腸炎,腎障害

食道癌術後肺炎(MRSA肺炎疑い)

3月24日 食道癌、化学放射線療法,肺転移、
呼吸障害

3月31日 食道癌術後、肝硬変、食道ろう、小腸による
再建、MRSA腎症、血液透析

4月28日 食道癌術後、胃管肺ろう、肺炎、気管開窓術、ステント留置

5月12日 食道癌呼吸困難で緊急入院、気管ステント留置、敗血症

6月2日 食道癌術後頸部リンパ節転移、反回神経麻痺、放射線治療、呼吸困難、食道気管ろう、気道出血

6月9日食道癌,気管浸潤、気管ステント留置、肺膿瘍

、、、



毎月毎月、術後の肺炎や縫合不全で苦労している例や、
再発していろいろ対応したけど
治療が難しくなって、、、と

その話を、それほど術後管理が大変でない
他の専門の外科医の前で話しなきゃいけない。


「食道は大変だねえ」

といわれながらも、でも食道癌の
患者さんと向き合ってる食道外科医。

あの頃もきつかったけども
今もやっぱりちょっと油断すると
状態が悪化する。

丁寧な術後管理が必要で

全国の食道外科医
みんな頑張ってます。


ぽちっとな
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by kenzaburou41 | 2012-09-02 11:29 | 手術の合併症の話 | Comments(0)