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食事量が増えない

「どれくらい胃が残ってるのですか?」
「食道はどれくらい切ったのですか?」
「いつになったら大きくなるのですか?」

というよくある質問。

切った胃の面積は5分の1くらいかもしれませんが
縦にうんと引き延ばしております
胃を食道の代用に用いた再建例では,細くなった胃を頸まで吊り上げていますので,
1回の食事量は術前の半分が普通です.

食道は頸部食道といって咽頭からすぐしたの食道の一部を
のこして全部切除するのが一般的なので「亜全摘」(あぜんてき)
という表現を使います。

いつになったら大きく、、ですが残念ながら

胃は永久に大きくなることはありません.

無理にたくさん食べるとたちまち下痢になり(ところてん方式),喉から落ちていかないで逆流します.
体に必須のタンパク質に富む副食を主とし,主食(炭水化物)は副(おまけ)と考えましょう.

 毎食事どきには副食を摂って,間食として炭水化物の多い物
(おにぎり,煎餅,スナック菓子,饅頭など)を摂る.
熱いもの(常識の範囲で)や辛いものは食道炎を悪化させる
ことや,新しく咽頭癌(のどの入り口の癌)ができたりする増悪因子になるので,
なるべく控えましょう.

間食は必須ですが,夜食は禁止です.術直後は特に食事摂取がうまくいきませんから
「経腸栄養」といって腸に直接栄養剤を投与して、栄養補助を行う施設が
多いと思います。(全くやってないところもあります)

「経腸栄養」は一般的に退院して,自宅で、術後3カ月程度継続します.
(期間に関しては個人差があり,食べられる方は1-2ヶ月でやめる方もいらっしゃいます.
昼はお仕事して,夜間滴下しながら寝て朝終了するというのでも良いです.
自分の食事が安定していれば,必ずしもきっちりやる必要はありません.
1日1~2パック400~800 kcalが目標ですが,自己調節してかまいません.

食が細いと感じたら増やし、逆に食べられていれば一日おき等,
間隔をあけてもかまいません.
体重は最も簡便かつ包括的な全身状態の指標です.
毎週一回条件を決めて測定しましょう(起床時).

術後患者の体重は標準体重より少ないのが普通で,
-10%程度までなら許容範囲でしょう.術後3カ月までは減少し,
その後安定しますが,増加に転じるには2年以上かかります.

その間再発や肺炎などの合併症があればたちまち減少します.
従って減少し続けなければOKということです.
体重を増やしたいからといって無理に食事を増加させれば,
かえってダンピングを誘発し,逆効果となります.

体重が増えないからといって焦りは禁物です。
食事のときも周りにペースを合わせて早く食べると
あとでダンピング症状がでて苦しい思いをします。

かならず、マイペースを守り、残った胃をいたわりながら
良く噛んで食べましょう。



ぽちっとな 
# by kenzaburou41 | 2012-08-19 18:16 | 手術後のアフターケア | Comments(1)

ダンピング症状

ぽちっとな 休みなしですわ~

「小ボスの食道癌術後マニュアル」

術後これだけは知っておきたい注意事項~

その1

ダンピング症状



吸収の早い糖分・炭水化物を一度にたくさんとると,冷や汗をかいたり
嘔吐したりすることがあります(これをダンピング症状といいます).
しばらく横になって休むなどの休息を取る必要があります.

食事は,主食(とくに麺類は最初は難しいです)を控えて吸収の
ゆっくりした,たんぱく質や脂肪分を大目にとるようにしてください.

初めのうちは食事してすぐに下痢することが少なくありません,
徐々に食べ方になれる(大食い、早食い禁止)必要があります.
ワカメなどの海藻類やキノコ,しめじなどの消化の悪いものは,
はじめは控えた方がよいです.

午後4時頃の脱力感は低血糖発作によるものの事が多い
(ダンピング症状)のでその場合は,速やかに糖分を補給しないと
脳に重篤な障害を生じることがあります.


食事をゆっくり取る事を心がけ,食後2時間くらいして脱力感,
手足のしびれなどの低血糖症状がおきたらすぐに糖分が取れ
るように飴などを持ち合わせておくのが必要です.
食間におやつをたべるなど間食の習慣をつけるのもよいでしょう.

自分の体の作りが大きく代わったのを頭がそれを認識していない
部分があり,体力をつけようと無理に食べるとダンピングを起こして
一日中ぐったりということも少なくないようです.

十分に心と体が一致するまで3年くらいかかると言われていますので,焦らずにゆっくりと慣れていくしかありません.

胃が細くなった以上,それを代用するためには
細かく食べたものを粉砕し,下に送り込む必要があります.

良くかまないと食道と胃のつなぎ目に食べ物が引っかかり苦しくなります.

良くかんで食べる事が重要です.入れ歯があわずに良くかめないのは
術後の回復にとって致命的ですので,
早急に歯科医を受診し,良く咀嚼できるような環境を整えましょう.
# by kenzaburou41 | 2012-08-16 23:37 | 手術後のアフターケア | Comments(1)

肺炎

食道癌の手術合併症で
もっとも頻度の多いのが肺炎で

元々食道癌になりやすい人が
お酒,タバコの相乗効果と言われていて

食道の手術前,少なくとも1ヶ月
前には禁煙をする必要がありますが

入院して「昨日まで吸ってきました、
今日から禁煙です」

とか

さらにタバコを入院時に持ち込んで
来るとなると

我々医療者がせっかく、サポートしようと
頑張ってても水の泡

しかし、禁煙が守れない患者さんは
術後1週間、ものすごく苦しい思いを
する、と覚悟していたほうがいいと思います。

大きく深呼吸できない、

喉の辺りでゴロゴロ言っているけど
痰を吐き出せない

「まるで水中でもがいているかの
ように苦しかった」

とおっしゃいます。

どうしても痰が取れない場合は
のどの小さな穴をあけて痰をとる
管を挿入します

それでも肺炎が悪化する場合は
人工呼吸器を再装着、

重い肺炎との戦いが長引き、
長期ベッド上の生活になり
そうとう体力も衰えます。

「食道癌」
見つかった時点で、手術をしようと
思ったら


まずは禁煙が大事です。

あなたをみんなで見守っています

どうぞ勇気をもって立ち向かいましょう


ぽちっとな
# by kenzaburou41 | 2012-08-16 00:10 | 手術の合併症の話 | Comments(1)

英文投稿

昨年ENDOSCOPYにREJECTされた英語の論文を
書き直してようやく再投稿にこぎつけたんですわ

「食道癌のブログ」を書きつづけて、結局
価値も分らぬ第3者にあっけなく消去され

やっぱりきちんと英語の論文をたくさん書いて
認めてもらわなきゃ話にならないってことが
重々身にしみたんですわ

ブログをかくペースはゆっくりになりますが

ひきつづきがんばるんで

よろぴこっとな

ぽちっとな
# by kenzaburou41 | 2012-08-15 21:32 | ひとり言 | Comments(2)

後出血

食道がんの手術~気をつけること

手術中に起きることで命にかかわることというとまず出血が
第一に挙げられます。

食道がんの手術は、消化器外科の手術でもあり
胸部外科の手術でもあり、首も扱うし、腹もあける

大きな手術です

それだけ守備範囲が広いわけですので
さらに癌が進行しているとなると、出血も多くなりやすく

かつもともと余分な脂肪の多い方は手術もしにくく
出血量も多くなりがちです。


手術中に止血ができなくて、命を落とした、

という経験は僕はありませんが、

自分の手に負えなくなって、上司に止めてもらった
という経験は何度もあります。

「出た時にしっかり止められるか」もまた
外科医の大事なスキルで

問題が起きるのは、あるていど人間がやること
なので仕方がないのですが

起きた時に、最悪の事態=死

を回避するために、被害を最小限で食い止める
努力をしなければなりません


一人として同じケースというのは
ありませんから、常に出た時にどう対応するのが
いいか、を準備しておく必要があります。


無事手術中止血ができて帰ってきた。

しかし出血量が多いほど、術後の循環動態も
変動しやすく、

手術時間が長いほど、体の負担も大きくなります。

手術した当日、患者さんの家族に術中に様子を
説明し、とれたものを見ていただき、

「これくらいの病気でした、残念ながら
かなり転移があったので、再発する可能性が
高いと思います」

などの予測を聞き、

ご家族には面会していただいて帰ってもらうのですが

時々

そうたくさんあってはならないのですが

「後出血(こうしゅっけつ)」といって
手術が終わったときには止まっていた血が

また出始める、ということがあります。


体に患者さんはいろんな管をつけて帰ってきて
そこから血が垂れていると、ご家族の方は
初めて見たときに「血がでてる」とびっくりされます。


管は「たまったものを外にだす」役目と
「出血していないか、中の様子を知る」2つの役割があります。

術当日の役目は主にこの「中の様子をしる」目的です。

管から真っ赤な血がびゅんびゅんでて、タンクいっぱいになって
血圧もさがる、脈が早くなる

このときは輸血を用意しながら、止血のことを考えねばなりません

「再手術したほうがよいだろうか」
「いや、これくらなら待てそうだろう」

ご家族が帰った後も、我々はこまめに管の様子をチェックし、

「ああ、これなら安心だ」ということを確認して床につきます。


採血して、やっぱり出てる、となるとまた手術室に
もどって、麻酔をかけて、と再手術になります。


いざ開けてみると、ほんとに小さな血管からの
拍動性の出血で、「これが原因?、、うーん、、」

再手術は患者さんにとっても、医師にとっても
ダメージが大きいです。

昼も夜も、食道外科医、
がんばってます

ぽちっとな
# by kenzaburou41 | 2012-08-13 23:38 | 手術メモ | Comments(0)